TALK#2 パラダイムシフト時代を生き抜く企業経営 株式会社シグマ代表取締役 山本 和人 × ミズキ代表取締役 水木 太一 × 大手広告代理店代表取締役 横井 司

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3.過去最大のパラダイムシフトを生き抜くには

これまでの経営の中で、「世の中が大きく動いた」と感じた瞬間があれば教えてください。

水木
僕はスマートフォンの出現した「今」の時代ですね。
何かのセミナーで見た写真なんですけど、印象に残っているものがあります。それは、ヴァチカンのサン・ピエトロ広場の同時期・同時間帯を撮影した写真なのですが、2003年の写真には自分の目で見ている姿が写っているのですが、2015年のものはみんながスマートフォンの画面を通して広場を見ている(=広場を撮っている)という風景に置き換わっていて。
横井
最近ではポケモンだって、任天堂DSを買わなくてもスマートフォンでできるようになった。
水木
そうそう、スマートフォンが一台あれば何でも完結してしまう時代ですよね。精密機械を扱っている我々からすると、完全に世の中の流れが、ハードからソフトに変わってきた。スマートフォンの進化は、モノづくりの文脈でもエポックメーキングだと思うし、危機感を募らせるキッカケになりましたね。
会社の在り方としても「限られた人しか知らないけどいい会社」から、「いい会社であることを世界に知ってもらわないといけない」という文脈に変化してきた。
山木
そうですよね。僕も2007年のスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションには、ものすごく衝撃を受けて何回も見ました。モノづくりの立場だと、まずは構成パーツから考えるんですよ。インターフェイスもボタンがどうだ、質感はどうだ、レイアウトはどうだ、照明処理は…と。しかしアイフォンは全てがソフトウェアで構成されいていた。つまり人間の感覚がハードウェアからソフトウェアにガラッと変わったということですものね。
山木和人

横井さんはいかがですか?

横井
私が感じている変化の瞬間は「今」と「少し先の未来」の2つだと思っています。
我々の仕事は世の中のトレンドを捕まえていく必要があるんですけど、今の世の中を見ると新しいモノが生まれにくい時代になってしまったんですよ。
例えば、今話題になるのはおそ松さんとか、ゴジラとか、ポケモンとか…昔流行ったコンテンツのリバイバルばかりで、新しいコンテンツが生み出されにくくなってきている。クリエイターが冒険できない時代になってきたんでしょう。このことは、社会の高齢化が進み、若い人が新しいことをしようとしていても、上の世代の成功体験が重しとしてのしかかっている時代になってきたと考えられるからではないでしょうか。
だから私たちの世代が若い世代をバックアップして、新しい価値を作る必要があると思っています。

なるほど。それではもう一つの「少し先の未来」についてはいかがですか?

横井
AIとVRの進化は目を見張るものがありますよね。処理速度は人間を軽く超えていますが、では人間が勝てるものはなにか—僕は「感性」だと思っています。でもね、人は「経験」をして成長しますが、この先VRが発達するとその「経験」が欠如してしまう可能性がありますよね…今後、人間はどうなってしまうんだろうと危惧をしています。
横井司
山木
僕も二人と同感で、一番変わってきているのは「今」だと思います。
昔は製造メーカと消費者とか、日本人と外国人、発信する側と受信する側といったように関係性が明確だったんですけど、今はその境界線があいまいになってきている。同時に世界も小さくなってきて、関係性が変わってきて…すごい時代になったなと感じています。
だからこそ、これからは、関係性を作るところに主体的にかかわっていくしかないと思っているんですよね。
「昔はこうだった」と定義する途端、新しい関係性は消えてなくなると思うんだよね。
横井
そうそう。だんだん一軸では考えられなくなってきているんですよね。

それでは最後に、時代の変化に対応するため、お三方はどんなことに力を入れていこうとお考えでしょうか。今後の予測やビジョンを教えてください。

水木
私どもの会社は、「突き抜けていく」ことをさらに意識したいと思っています。今まで経営を安定させることを目指してきましたが、さらにチャレンジをしないと時代の変化に置いていかれてしまうんじゃないかと。
だから、売上や人材確保を1割頑張ろう、2割頑張ろうというのではなく、2倍、3倍、4倍とn倍の考え方を持とうと思っている。それを達成するには、今の技術で効率をちょっとよくしただけではだめだと思っています。

具体的にお考えになっていることはありますか?

水木
例えばですが、今は単品でモノづくりをしているところも、アッセンブリでユニットのような形にしていくとか、鉄じゃなくて樹脂で作ってみるといった、突き抜けていくアイディアを考えていくべきだと思っています。
中期的には医療分野、長期的にはロボット関連の開発をとも言っていますが、具体的にそこまで到達するには、n倍という成長力をもって幅を広げていかないといけないと思っています。
水木太一
山木
時代が変わるからと言って、人間の本質は意外とそこまでドラスティックには変わらないと思っています。まず注力したいのは、自分たちが他社に絶対に負けないコアな部分を認識して、より高いところに行けるように努力すること。
時代の変化や社会との関係性としっかり向かい合って、自分たちは絶対に負けないことがあるという認識が持てさえすれば、やっていけるんじゃないかと思っています。
横井
私は、半歩先を見ることを徹底したいと思っています。高齢化社会、少子化社会のダブルの変化がこれからずっと続くと、消費行動が変わってきますよね。この部分は1歩、2歩先ではなく、「半歩先」を丁寧に予測して事業を展開しないといけないと思っています。具体的には、産学連携をしっかりやっていこうと思っています。アカデミックなコラボレーションをすることで、我々だけでは得られない消費行動や買い物心理の視点を獲得していこうと思っています。
日本国内だけの成長を見ていてはなかなか拡大しにくい時代ではありますが、その中でも社員も増やす、営業網も増やすといった規模的な成長も計画しています。そのようなことをしっかりやることで、業界内、日本の市場内でしっかりとしたポジションを作るということを、社員と共に実現したいと思っています。
水木
でも、20年後、会社が健全でいることへ絶対的自信があるかといえばそれはわからない。みんなはどう?
横井
ないない(笑)。そもそも自分が健康でいられるかわからないからね。
山木
そうそう、5年後の世界ですら、まだ誰もわからないですしね。
横井
でもね、会社としてきちんとした経営基盤があって、しっかりとした計画の元に投資をできる会社の体力があり、「この企業と組みたい」と思える先があれば、ジョイントして相乗効果を生んでいくというビジネスの方法も考えられると思うんですよね。そのような有機的な動きができていれば、20年後も面白い仕事ができているんじゃないかと思っています。
山木
私たち2代目は、創業社長の想いを背負っているので、私たちの代で事業を売り飛ばすなんて考えは一切なくて、きちんとした形で次に引き継ぐというのが大きなミッションなんですよね。僕が雇われ社長であれば、その期間だけバンバン投資をして株価を上げて…と考えるかもしれないですが(笑)。
一同
笑。
山木
我々はそういうことはしないですよね。長期的な視点に立った時の経営をしていきますからね。だから同族経営はあまりよく言われないこともありますが、そうでもないですよ、というのはよく飲みながらはなしますよね(笑)。
水木
そうですよね。次の代に引き継ぐときに、きちんとした経営状態で引継ぎをしたいし、そこを目指して今必死に考え、悩んで、責任を感じながらやっているという感じですよね。
我々が定年をして、会社が健全に残っていた時は、盛大に飲もうねと話しています。お互いに70歳になった時に、おいしいお酒で乾杯できるよう、これからも頑張っていきましょうね。
水木太一 山木和人 横井司

PROFILE

山木和人

山木 和人
株式会社シグマ代表取締役

1993年株式会社シグマに入社。 取締役・経営企画室長を経て2012年代表取締役社長就任。唯一の製造拠点である福島県会津、そして取引先のある海外を行き来する。音楽や哲学、そしてアートなどカルチャーへの造詣も深い。

水木太一

水木 太一
株式会社ミズキ代表取締役

メーカー勤務を経て1998年ミズキ入社。2008年代表取締役就任。「世界に通用する部品メーカー」をコンセプトに掲げ、積極的なグローバル展開とともに、ミズキブランドの構築を進めている。2017年には新社屋が完成し、今後より一層の事業拡大を計画している。

横井司

横井 司
広告代理店代表取締役

他社企業での勤務を経て1993年入社、2011年代表取締役社長に就任。マーケティングとプロモーションのトータルエージェンシーの経営者として時代の「半歩先」を読むことを常とし、広範囲な分野への興味と知識の持ち主。絶妙なトークで、3人の中のムードメーカでもある。

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