株式会社ミズキ

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TALK#2 パラダイムシフト時代を生き抜く企業経営 株式会社シグマ代表取締役 山本 和人 × ミズキ代表取締役 水木 太一 × 大手広告代理店代表取締役 横井 司

ホーム未来志向の経営者たちPAGE2 「フレキシブル」と「コア」の共存

2.「フレキシブル」と「コア」の共存

シグマさんは、今年で創業55年。大きな時代の変化をどのように意識し対応されてきたのでしょうか?

山木
確かに市場環境はとても変わってきました。創業当時、日本はまだ光学産業がとても栄えていてレンズメーカーも数十社あり、それこそ、銀座の飲み屋に行くと、レンズメーカーの社長ばかりだったそうです。少し前の日本のITブームのように、レンズメーカーがひしめき合っていたんですね。しかし、カメラブームが終わり、競争が激化して、結果的に3社ぐらいにまで淘汰されました。
水木
その間にフィルムからデジタルに、技術的にもマニュアルからオートフォーカスに…とドラスティックな変化があったんですよね。
山木
そうそう、ガラッと変わった印象がありますよね。でもね、いわゆるダゲレオタイプのカメラが誕生してから数えると177年経つんですね。戊辰戦争がはじまる20年くらい前。その頃から「きれいな写真が撮りたい」という人の欲求というのは、あまり変わっていないんです。
時代や技術はだいぶ変わりましたが、「きれいな写真が撮れるカメラを作る」という大きな方向性は、他社さんも含めあまり変わっていないというのが実感です。

なるほど。カメラの製造は、専門技術がものを言う業界だと思いますが、「技術」についてはどのように捉えていらっしゃいますか?

山木和人
山木
基本的に技術って積み上げなんですよね。いきなりぽっとできるものではない。一人ひとりの技術者の経験や失敗が次のステップを作る業界です。ですから、人をあまり変えずに知識を共有して積み上げていくということが、とても重要だと感じています。欧米のように「自分の知識」として隠して、その人が去ったらその技術がなくなってしまうのではなく、技術として継承していく。ここをいかに実直にやっているかが他社との差別化要因になると思います。

ただ、製造業とは全く異なる広告業界にいる横井さんの会社も、積み上げてきたノウハウがあるからこそ、ここまで信頼を勝ち得てきたと思います。そういった意味では、業種は違えど共通するところはあるんじゃないかな。

シグマさんは、積み上げてきた技術を元に、創業以来主力商品としてきたレンズの他、sdシリーズ、dpシリーズといった個性的なカメラも製造されていらっしゃいます。とてもユニークな視点でモノづくりをされていると感じますが、その理由などがあれば教えてください。

山木
大きく分けて3つあります。
1つめは、他社と差別化をするためです。
やはり同業者は大手さんが多いので、中小企業である我々は、他社とは違う製品やサービスは何か?そしてお客様のニーズにユニークなかたちでどう応えていくのか?ということを常に考えています。「ニッチでも絶対にお客様に刺さるポイント」を探し続けた結果、あのような商品やアイディアが生まれてきたんです。

2つめは、お二方にも共通する課題だと思うんですけど、中小企業で上場していないということは利益を上げることと同じく、雇用を確保することが重要ですよね。
山木和人
水木
そうですね。事業に直結する課題ですね。
山木
そのためには、自社の立ち位置を明確にし、お客様に信頼されて魅力のある企業である必要があるんです。そうすることで事業が継続でき、ひいては従業員の雇用を守れると考えています。そのために「お客様に愛される会社になろう」という長期的なビジョンの元、商品開発などを戦略的にやっています。

3つめは、ユニークなことを生み出すのがそもそも面白いからです。お客様に新しい提案をするって、とても面白いことだし、自分自身のモチベーションも上がるんですよね。
そのような理由で、あのような取り組みをしているわけです。
水木
それってすごいことですよね。
デジタルカメラって、2008年をピークに作れば売れる時代でしたよね。僕だったら、長期的なビジョン云々よりも、安定的な収入確保のために、大手さんのOEMを請けるなど安易な道に行ってしまいそうだなと思うんだけど(笑)。
横井
カメラが大好きな人の心に刺さる製品を徹底的に作ることで、会社の5年後も10年後もデザインしていこうと考えて実行してきたということですもんね。
水木
しかも自社工場を日本に持ち、製造から売り方まですべて自社で一貫して行っているというのは、設備投資もすごくかかるわけで。そのスタイルを貫いてきたのは驚くし、しかも「やりきっている」という点が本当にすごいなといつも思っています。

市場ニーズを捉えることの重要性

横井さんのビジネスも、お客様のニーズにどう寄り添うかが重要という共通点があると思いますが、いかがでしょうか?

横井
製造業とサービス業は、BtoBかBtoCといった違いはありますが、「顧客ニーズに応えていく」という根幹は、お二人と違わないと思います。

やはり、時代の変化に伴って「顧客ニーズ」も変化しているとお考えですか?

横井司
横井
そうですね。広告業界でいうと、現在は顕在化しているニーズが少なくなってきていると感じます。
我々のクライアントは、日用製品を作っている企業さんやチェーンストアさんなのですが、以前ならその先にある消費者の「こういうものが欲しい」というニーズが分かりやすかった。
そのニーズをわかりやすく商品開発や売り場作りにアウトプットしていくということができていれば、「モノを買ってもらう」というゴールは達成できていたんです。
しかし、現在はモノがあふれたデフレの時代になってきて、お客様自身も「何が欲しいのかわからない」という現象が続いていますね。

そういう文脈で必要となってくるのは、どんな視点なのでしょうか?

横井
自己満足のためのマーケティングではなく、お客様が潜在的に何を欲しているかをしっかりと見据えたマーケティング的視点です。
マーケティングをしっかりやった後で、ポスターなのか、SNSなのか、はたまたイベント展開なのかといった適切なアウトプットを選択できるかが重要だと思っています。
水木
あれ? 横井さんいつもと違う! きちんと本質を突いた回答をしてる(笑)。
横井
お酒が入っていないから、今日は違うの。
山木
今日は横井さんの弟さんが来ているんだよね(笑)。
水木太一 山木和人 横井司

その先のお客様へ思いを巡らす

水木
横井さんの会社のホームページに書いてあるコンセプト「買いたい気持ちをデザインする」って、カッコいいよね。心にグッと刺さりました。
横井
まさに、その言葉がうちの会社を端的に表していると思います。
私たちの会社は印刷工場を持っていたり、紙を使った制作物を作ったり、イベントをやったりと本当に様々なことをやっているんです。だから、広告だけをやっている代理店とは言いたくなくて。で、何をやっている会社というと、「買いたい気持ち」をいかにクリエイトできる企業かということで、そこを明確にしたいなと思っているんです。

横井さんの会社では、「生活行動カレンダー」という商品があります。これは顧客ニーズに応えるだけでなく、自社商品として調査研究データを商品化したという点で大変ユニークだと思いますが、開発秘話などあれば教えてください。

横井司
横井
私の会社は、売り場の販売促進支援からスタートしている企業です。現在の広告・マーケティング業界では売場重視の販売促進を支援する会社は多々ありますが、売場の販売促進からスタートし、そこに強みを持つ企業としては、我々がパイオニアだと自負しています。売り場をどう変えていけばいいのか?どうしたら売れるようになるか?を突き止めていくと、売り場にいらっしゃるお客様のことを知ることが不可欠です。
お客様は毎日生活されているわけであって、生活をすることでモノが欲しくなって購入に至る。とどのつまり、お客様の生活をいかに知っているかということが、売り場での販売促進につながっていく。そこから「生活行動カレンダー」が発想されて定期刊行につながっているんです。

目の前のクライアントさんのその先のお客様を常に想定されているということでもありますね。

横井
そうですね、ただ私からすると、水木さんも山木さんも、一見モノづくりという技術的なところを重要視しているように見えますが、実際はその先にいるお客様にどうアジャストしていくか?ということを日々考えて、技術革新をしたり、新しいサービスを考えたりしているんじゃないかなと思います。当たってます?
水木
山木
さすがですね。その通りです。

(株)ミズキでも、品質保証書の添付や外国語対応など、製品以外の取り組みも重視されていると伺ったことがあります。そのあたりも商品の先にいるお客様を意識してのことということでしょうか。

水木
そうです。保証のためにこういう書類をつけてください、英文で対応してくださいというお客様のニーズに対応していくことが、私たち企業の生き残るための一丁目一番地だと思っています。
「ウチは部品は作る会社で、書類を作るのは仕事じゃない」というスタンスでは、どんどん世界に遅れをとってしまう。実際に海外展開をして成長している企業は、製品以外でも頑張っているところが多いですよ。

フレキシブルな経営の秘訣

ここまでのお話で、客観的であること、対応が柔軟であること、そして商品の先のお客様を見ていることが3社にとても共通していると思います。そのような姿勢を持ち続けていられるのはどうしてでしょうか?

水木太一
水木
僕は、「危機感があるから」ですね。日本の市場ではこれ以上「モノづくり」が拡大しないと感じており、常に危機感を感じています。そこでわが社は、グローバル展開を考えており、製品を欲しいと言ってくれる世界中の人のニーズに応えていきたいと思っています。
横井
当社が客観的で柔軟に対応し続けられているのは、クライアント企業と、その先に企業の提供している商品を買っている生活者がいるという、2つのお客様のことを常に考えているからだと思います。
山木
私も基本的には会社の存続に対する危機感ですね。
どう生き残るかを考えると、常に強い存在が生き残るわけではなく、その環境にきちんと適した人が残るという適者生存という考え方があります。
これからの変化の時代、一番重要なことは「よく考える」ということだと思っています。ルールを決めて「こうでなければいけない」とした時点でもうそこでおしまいです。僕の好きな哲学者でポール・ファイヤアーベントという方がいて、「方法への挑戦」という名著があるのですが、そこで彼は「anything goes」、邦訳すると「なんでも構わない」と言っています。科学の歴史を見ていくと、科学はあるところで否定が行われて新しい革命が起こることで発展が生まれている。つまり何かに固執していると、本質的なことが見えなくなる。唯一ありうるルールとしては「anything goes」であると述べています。かっこいいですよね。
何が必要なのか、何を変えないといけないのかをよく考えることで、フレキシブルやコア(=こだわり)が見えてくると思っています。
水木太一 山木和人
水木
確かに「考える」というキーワードは重要ですよね。僕たち3人は「考える」というところでつながっていると思うんだよね。
山木
よく「これからはこういう時代だ!」と言う経営者の方がいらっしゃいますが、僕はそういう方はあまり信用していない。未来が分かる人は絶対にいないと思うし、いるとしたら詐欺師です(笑)。本当はね、みんな不安だと思うんですよ。
「ああでもないこうでもないって」と考えて考えて考えて、最終的に導きだされたことが本当の答えだと思います。
うちの会社にとても信頼しているデザイナーがいます。なぜ信頼しているかというと、彼も最終的な答えを導くまでに、悩みに悩んでいるんですよ。いろいろ検討してモックまで作って「これでいこう!」と決めた後にも、がらりとデザインを変えてきたことがあるんですよね。「ずいぶん変えてきたな」と驚くわけですけど、最後の最後まで考えた結果、こっちじゃなくてこっちだとなったわけで、アウトプットは当初と異なってしまったけど、考えてきた本質は一緒であるとこちらも気づかされるんです。
横井
最後まで考え抜くという姿勢は、とても信頼がおけますね。
水木
でもdpシリーズのようなこれまでのカメラの常識を覆すような個性的なデザインをできるデザイナーさんもすごいけど、あれでいこう!とGOサインを出す山木さんもすごいよね。あれは業界もびっくりしたんじゃない?
山木
デザイナーには、どうせ売れないから好きにやってくださいよと言ったんだけどね(笑)。
デザイナーなどのクリエイターには自由にできる余白が必要だと思っていてね。どうせ売れなくてもゼロがゼロになるだけですから(笑)。
横井
あのカメラのデザインは、光学に基づいて生まれたものなの?それともデザイナーさんがプロダクトデザインとして考えた末に完成したものなの?
山木
両方ですね。カメラはあくまでも撮影するための道具ですので、中に組み込むダイヤルの位置やレンズの位置などが決まってきて、それを踏まえてデザイナーがコンセプトを出していく。だから最終的なカタチが決まるまでは、デザイナーと技術者とのせめぎあいが多々あります。しかし目指す方向性は同じなので、最後のワンピースで「やっぱりこっち」という結論に辿り着くんです。

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